基準地価、下落率3年連続縮小-低金利やローン減税で住宅需要高まる
9月20日(ブルームバーグ):全国の全用途平均地価は3年続けて下落率が縮小した。低金利や住宅ローン減税といった政策効果が住宅地需要を支えている。
国土交通省が 19日発表した2012年の基準地価(都道府県地価調査)によると、全国の全用途平均(12年7月1日時点)は、バブル崩壊後21年連続で下落したものの、下落率は2.7%と前年の3.4%から鈍化。三大都市圏では、住宅地が0.9%下落(1.7%下落)、商業地は0.8%下落(2.2%下落)とマイナス幅が縮小した。
東北の被災地を含めてマイナス幅が縮小している都道府県が大部分を占めており、47都道府県のうち、下落率が縮小したのは住宅地で39、商業地で42に上った。愛知県は住宅地が横ばいと1位だった。
全国の住宅地の下落率は2.5%と、前年の3.2%から縮小した。国交省地価調査課の姫野和弘課長は、「安定した住宅需要」が見られる中、地価の下落が長期化したことで「値ごろ感が増し、住宅地を支えている」とみている。7月の新設住宅着工戸数は年率換算値で前月比4%増の87万戸で、同省は持ち直しの動きが継続していると分析。不動産経済研究所によると、12年の全国マンションの発売戸数は前年比15.5%増の10万戸と3年連続で増加する見通しだ。
もっとも、14年から税率が段階的に10%へ引き上げられる消費増税(現行は5%)の影響が今後、出て来かねない。みずほ証券の石沢卓志チーフ不動産アナリストは、「増税前の駆け込み需要などが今後出てくると予想されるため、住宅地の需要は当面は堅調に推移する」と予想する半面、引き上げ後は反動減による落ち込みから、「住宅地の回復傾向が今後もずっと続くかどうかは不透明」とみている。
不動産協会の木村惠司理事長(三菱地所会長)は不動産市場の回復を確かなものとするために「住宅・都市分野における成長戦略を加速していくことが必要」とのコメントを発表。消費税率引き上げに対して、住宅取得に関わる税負担を増加させない措置が不可欠と指摘した。
被災地
東日本大震災で津波や液状化などの被害を受けた地域の一部では、高台などへの住居移転の動きが地価を押し上げた。岩手、宮城、福島の3県は下落率が縮小した。岩手県陸前高田市は昨年は16%下落したが、高台への移転需要から今回住宅地で全国1位の上昇率(14.6%)となった。宮城県は東松島市が9.1%上昇するなど値上がりに転じる地点が増え、宮城県全体での住宅地は東京都と同率(0.6%)の低い下落率となった。
福島県も住宅地、商業地がいずれも下落率が縮小。千葉県浦安市は液状化被害の影響が少なかった地区で地価の回復傾向がみられ、昨年の7.1%下落から1.6%上昇に転じ た。
この結果、地価が大きく上昇した地点の大部分を被災地が占めた。全国の住宅地の上昇率トップ10位の中で1位の陸前高田市のほか、2位は岩手県宮古市、3位から10位はすべて宮城県だった。商業地は上昇率1位が宮城県石巻市(11.8%)で、2位が東京都墨田区業平1丁目(9.8%)。
地価が最も高かったのは、住宅地が東京都千代田区六番町で1平方メートル当たり価格278万円。商業地は東京都中央区銀座2丁目の明治屋銀座ビルで同1970万円だった。