税金滞納から差し押さえまでの流れ!滞納中でも融資は受けられる?
税金を滞納してしまった際、多くの人が気になるのが財産の差し押さえでしょう。財産を差し押さえられると、自分の意志とは関係なく不動産や動産が売却されてしまうため、注意しなければなりません。
この記事では、税金滞納から財産が差し押さえられるまでの流れや、差し押さえの対象となる財産について解説します。差し押さえに関する注意点や、回避するうえで有効な手段も紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
税金滞納から差し押さえまでの流れ
主な流れは以下のとおりです。
- 税金の滞納
- 督促状の送付
- 電話や文書による督促
- 財産や人物の調査
- 差し押さえの実行
- 差し押さえた資産の換価
- 滞納した税金への充当
それぞれの工程について解説します。
1.税金の滞納
税金の滞納とは、本来納付すべき期日を過ぎても支払いが行われていない状態を指します。税の種類によって納付期限は異なりますが、基本的に法人税や消費税などは決算日から2か月以内に納付する必要があります。
納付が1日でも遅れると未納扱いとなり、延滞税が発生する可能性があるため、期限を厳守することが重要です。地方税や国税のどちらであっても、滞納が続くと督促状が送られ、最終的には財産の差し押さえへと発展する可能性があります。
税務署や自治体は納税義務者の経済状況を考慮しつつ、一定の手続きを経て厳格に回収する仕組みになっています。納税が困難な場合は、事前に担当機関へ相談し、分割納付や延納の手続きを検討しましょう。
出典:「申告と納税」(国税庁)
https://www.nta.go.jp/publication/pamph/koho/kurashi/html/06_1.htm
2.督促状の送付
税金の支払いが期限を過ぎた場合、最初に納付を求める督促状が送付されます。督促状とは、財産を差し押さえる前に納税を促す目的で発送される通知です。ただし、督促状を受け取ったからといって、すぐに財産が差し押さえられるわけではありません。
法律上、督促状が送付された日から10日が経過すると、行政機関は差し押さえを実施する権限を得ることになります。差し押さえが実施されるかどうかは、その後の対応次第です。
必要に応じて、督促状の段階で速やかに納税に関する相談を行いましょう。適切な対応を怠ると、資産を失う可能性があるため、早期の行動を心がけることが大切です。
3.電話や文書による督促
督促状が送付された後も納税が行われない場合、税務署や自治体はさらなる対応として、電話や郵送による通知、自宅や事業所への訪問を通じた催促を実施します。納税者に対して支払いの意思を確認するとともに、未納の状況を早期に解決するための措置です。
通常、税務当局はすぐに強制的な差し押さえを実行するのではなく、まずは個別の状況を把握し、納税の意思があるかを確認します。しかし、再三の連絡に応じない、または支払いの意思が見られない場合は、財産の差し押さえへと進む可能性が高くなります。
連絡を無視し続けると給与や銀行口座、不動産などの資産が差し押さえの対象となるため、早めの対応が欠かせません。督促の段階では、納税猶予や分割払いなどの相談にも応じてもらえるため、放置せず誠実に対応することが求められます。
4.財産や人物の調査
電話や書面による督促が続いても未納状態が解消されない場合、税務署や自治体は差し押さえに向けた準備として、滞納者の財産や生活状況について調査します。調査の対象となるのは、以下のとおりです。
- 不動産
- 預貯金
- 給与
- 生活実態
- 勤務先の状況
こうした調査は国税徴収法に基づいて実施されるため、個人情報保護法に違反することなく合法的に進められます。必要に応じて金融機関や勤務先への問い合わせが行われ、滞納者の経済状況を正確に把握したうえで、どの財産を差し押さえるかが決定されます。
5.差し押さえの実行
度重なる督促にもかかわらず、納税が行われない場合に取られる最終手段が差し押さえです。税務署や自治体は、事前に行った財産調査の結果をもとに、滞納者の資産のなかから差し押さえ対象を特定し、執行に踏み切ります。
差し押さえが執行されると不動産には差押登記が行われ、金融機関には通知書が送付されます。資産の自由な処分が制限されるため、注意しなければなりません。
また、差し押さえた不動産や動産は後日公売にかけられ、未納税額の充当に充てられます。執行は国税の場合は税務署の職員、地方税の場合は自治体の職員によって行われ、法的に強力な権限が付与されているのが特徴です。
6.差し押さえた資産の換価
差し押さえられた資産は、現金化するための手続きが進められます。不動産や自動車などの高額資産は国税局や地方自治体によって公売にかけられ、インターネットオークションや入札方式で売却されます。こうした換価手続きによって得られた資金は、滞納税額の返済に充てられる仕組みです。
給与や預貯金に関しては、必要な金額のみが差し押さえの対象となり、全額が回収されるわけではありません。給与は生活費に配慮して一部のみが控除されるため、滞納者の生活基盤が完全に失われることは避けられます。
また、換価された資産の売却額が未納分を上回った場合、差額は滞納者に返還されます。しかし、市場価格よりも低い価格で売却されるケースが多く、経済的損失は避けられないでしょう。
7.滞納した税金への充当
公売や取り立てによって現金化された資産は、滞納している税金の支払いに充てられます。差し押さえの結果得られた金額が未納分を超えた場合、余剰分は滞納者へ返還される仕組みです。
しかし、すべての資産が差し押さえの対象となるわけではありません。最低限の生活を維持するために必要な財産は、法律により保護されます。税務当局は滞納分の回収を進める一方、滞納者の最低限の生活を考慮した対応を取っています。
差し押さえの対象と対象外のもの
差し押さえの際、対象になるものとならないものがあります。ここでは、具体的にどのようなものが差し押さえの対象となるのか、あるいはならないのかを詳しく解説します。
対象となるもの
対象となる財産は以下のとおりです。
- 不動産(住宅、土地など)
- 給与(手取り額の一部)
- 預貯金(銀行口座)
- 生命保険(解約返戻金のあるもの)
- 有価証券(株式、投資信託など)
- 債権(売掛金、貸付金など)
- 動産(現金、自動車、貴金属、家電、骨董品、絵画など)
- 家賃収入
給与に関しては、法律により手取り額の4分の1までが差し押さえの対象となり、33万円を超える部分は全額回収される可能性があります。現金は、所持金が66万円以上の場合、超過分が対象です。
預貯金は、法的な制限はないものの、最低限の生活費を確保するための配慮がなされる場合もあります。
動産に関しては、骨董品や貴金属、高価な家電など資産価値のあるものが対象となります。日常生活に不要な高額品は、差し押さえのリスクが高いといえるでしょう。
対象とならないもの
以下の財産は、法律により差し押さえの対象外とされています。
- 日常生活に必要な衣類、寝具、家具、台所用品
- 生活維持に不可欠な食料および燃料
- 66万円までの現金
- 給与の手取り額の4分の3まで
- 国民年金、厚生年金、生活保護給付金
- 生計維持に欠かせない職業道具や印鑑、教育に必要な書籍や文房具
これらの財産は、滞納者の最低限の生活を維持するため、国税徴収法や民事執行法などの法律によって保護されています。たとえば、生活必需品である衣類や家具、台所用品は差し押さえの対象外とされ、仕事を続けるために必要な道具や印鑑も保護の対象となります。
また、給与の一部や公的な給付金も生活を圧迫しないよう制限が設けられています。
現金についても、66万円以下の手持ち資金は差し押さえから除外されるため、一定の資産が確保される仕組みです。この金額は、以下の法律に基づいています。
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(差押禁止動産)
第百三十一条 次に掲げる動産は、差し押さえてはならない。
三 標準的な世帯の二月間の必要生計費を勘案して政令で定める額の金銭
引用元:民事執行法
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(差押えが禁止される金銭の額)
第一条 民事執行法(以下「法」という。)第百三十一条第三号(法第百九十二条において準用する場合を含む。)の政令で定める額は、六十六万円とする。
引用元:民事執行法施行令
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また、仕事や生活に欠かせない財産は保護されるものの、滞納が続けば、法的措置が厳格に執行される可能性があるため、早めの対応が必要です。
差し押さえに関する注意点
差し押さえに関する注意点は、以下のとおりです。
- 差し押さえ後に融資を受けるのは難しい
- 完納するまで解除できない
- 税金は債務整理できない
それぞれのポイントについて解説します。
差し押さえ後に融資を受けるのは難しい
税金の滞納によって差し押さえが行われると、金融機関からの信用が損なわれ、住宅ローンや事業資金の調達が困難になります。財産が差し押さえられた状態では、新たな融資の審査に通ることがほぼ不可能となり、事業の継続や生活の維持に影響を及ぼすでしょう。
そのため、税金の支払いが困難になった際には、放置せずに早急な対応が求められます。督促状を受け取った時点で速やかに税務署へ相談し、分割納付や猶予措置の申請手続きを進めましょう。差し押さえを回避できる場合があります。
完納するまで解除できない
一度財産が差し押さえられると、滞納している税金を全額支払うまで解除されません。たとえば、銀行口座が差し押さえられた場合、滞納額に相当する資金が引き落とされるだけでなく、残高が不足している場合は追加入金が行われるたびに回収が続く可能性があります。
また、給与が差し押さえられた場合、法律で定められた範囲内で手取り額の一部が毎月差し引かれる仕組みになっており、完納に至るまで継続的に差し引かれます。不動産の場合は、所有者の意思にかかわらず公売にかけられ、売却益が税金の充当に充てられます。
こうした状況に陥ると、生活や事業に多大な影響を及ぼすため、未納税額がある場合は早急に税務署へ相談し、分割納付や納税猶予の申請を検討しましょう。収入や支出の状況に応じた柔軟な対応が可能な場合もあるため、早めの行動が求められます。
税金は債務整理できない
借金の整理を行う手段として「債務整理」がありますが、滞納した税金はこれに含まれないため、注意が必要です。債務整理には、任意整理・個人再生・自己破産の3つの手続きがあります。
なかでも自己破産は、金融機関からの借入やクレジットカードの負債を免除する強力な手段ですが、税金に関しては適用されません。税金は非免責債権として扱われ、手続きを経た後も、延滞税を含めた全額を納付する義務が残るためです。
自己破産によってほかの債務を解消できたとしても、税金の支払いは免除されず、引き続き納付を求められます。任意整理や個人再生の場合も同様であり、住民税や所得税などの公的負担は減額や免除の対象外となるため、注意しなければなりません。
差し押さえを回避するには
差し押さえを回避するために重要なのは、以下の手段です。
- 公的機関に相談する
- リースバックを利用する
- 任意売却する
- 不動産担保ローンを利用する
それぞれの方法について解説します。
公的機関に相談する
税金や国民年金保険料の支払いが困難になった場合、そのまま放置せずに、自治体の窓口や年金事務所へ速やかに相談しましょう。公的機関では、経済状況に応じて納付方法の見直しや、猶予措置を提案してもらえる可能性があります。
たとえば国民年金は、収入減少などやむを得ない事情がある場合、保険料の免除や納付猶予制度を利用できます。学生であれば、特例制度を申請すると一定期間の猶予を受けることが可能です。
税金に関しても、納税が難しい事情を説明すれば、分割払いの相談に応じてもらえる場合があります。未納の状態を続けると、将来的に財産の差し押さえや社会保障の受給に影響が出る可能性があるため、できるだけ早く対応し、適切な手続きを進めましょう。
リースバックを利用する
リースバックは、不動産を売却しながらも同じ家に住み続けられる仕組みで、資金調達の手段として注目されています。リースバックを取り扱う企業と売却契約および賃貸契約を締結すると、所有していた住宅を手放した後も賃貸料を支払うことで継続して居住が可能です。
リースバックを利用すれば住み替えの必要がないため、老後資金の確保や相続対策としても有効に活用できます。しかし、契約内容が複雑で認知度が低いため、十分な理解を得ないまま契約を進めると、予期せぬトラブルに発展する可能性があります。
そのため、契約の際には賃貸条件や売却価格について慎重に確認し、納得のうえで進めることが重要です。リースバックを適切に利用すれば、まとまった資金を確保しつつ、住み慣れた家で安心して生活を続けられます。
任意売却する
住宅ローンの返済が困難になった場合、不動産を競売にかけられる前に任意売却を選択すれば、より有利な条件で売却できる可能性があります。任意売却とは、債権者と合意のうえで不動産を売却し、売却資金をもって滞納しているローンを返済する方法です。
競売と異なり、周囲に経済的な事情を知られずに売却を進められるほか、市場価格に近い金額で売却できる可能性があるのが特徴です。ただし、金融機関の承諾が必要であり、売却の手続きには時間を要するため、早めの行動が求められます。
不動産担保ローンを利用する
不動産担保ローンは、土地や建物、マンションなどの不動産を担保として資金を借り入れるローン商品です。金融機関によっては、築年数が古い物件や第二抵当権が設定された不動産、家族や法人名義の物件も対象となる場合があります。
不動産担保ローンは、有価証券を担保にする証券担保ローンや企業の在庫や売掛債権を担保にする動産担保融資と同じく、有担保ローンに分類されます。無担保ローンに比べて金利が低く、高額の融資を受けられる可能性があります。
不動産担保ローンは、融資額や返済期間の柔軟性が高く、まとまった資金を必要とする場合に適しています。ただし、担保となる不動産を失うリスクもあるため、慎重な検討が求められます。
こちらの記事では、土地担保で融資を受ける4つの方法について解説しています。メリットやデメリットについても取り上げているため、ぜひあわせてご覧ください。
まとめ
税金滞納が続くと、最終的に財産が差し押さえられるリスクが高まります。差し押さえを避けるためには、早めに税務署や自治体へ相談し、分割納付や猶予措置を活用することが重要です。未納のまま放置すると、生活や事業に深刻な影響を及ぼしかねません。
万が一、差し押さえの危機に直面した場合、不動産担保ローンの活用が有効な手段となります。不動産を担保にすることで、低金利かつ高額の融資が可能となり、滞納税の支払いに充てられるでしょう。
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